シミュレーションゴルフ 天井高の目安|開業前に引く550mmの内訳
シミュレーションゴルフの天井高の目安は、募集図面の天井高ではなく、打席で実際に使える「打席有効高」で2800mm以上です。GOLFZON JAPAN「GOLFZON 設置推奨寸法」(Ver.2025.02.06〜)は、打席部分高さ(床仕上げ〜天井仕上げ)の最低値を2800mmとし、その根拠を「身長180cmの人が正確なスイングでドライバーを振った時に当たらないと想定される最低寸法」と明記しています。
やっかいなのは、この2800mmを募集図面の数字とそのまま比べられないことです。天井センサー用の懐300mm、オートティーアップ用の床上げ200mm、天井仕上げ厚を順に引くと、梁下3050mmの物件でも打席有効高は2500mmまで落ちます。
逆のケースもあります。XswingGOLF「シミュレーションゴルフ打席サンプル集」(2024)には、フロアで一番低い梁下がH2400しかない区画で、打席上部だけ斜め天井や段差天井に造作して設置スペースH2800を確保したゴルフカフェが複数掲載されています。平均天井高で足切りすると、こうした物件を取りこぼします。
天井高は「足りる/足りない」の一次判定ではなく、引き算と逃がし方の設計問題です。本稿では次の3つを用意しました。
- 梁下実測値から打席有効高を出す逆算シート(GOLFZON公式寸法ベース・空欄版つき)
- 梁下実測値5段階ごとに「工事・捨てる機能・成立する収益モデル」を紐づけた分岐チャート
- レーザー距離計1本・30分で終わる内見実測チェックリスト11項目と、仲介に投げる3問
内見で測るべきは、フロアの平均天井高ではなく、打席予定位置の真上でクラブが通過する2m四方だけの梁下高さです。
シミュレーションゴルフの天井高の目安は?結論は打席有効高2800mm
天井高の目安は打席有効高2800mm以上、機器メーカーの出荷基準では施工後2850mm以上です。
この2つの数字は根拠が異なります。前者はGOLFZONの設置推奨寸法、後者は施工現場で運用されている出荷判断の基準です。物件を評価するときは、まず2800mmで可否を見て、機器の商談に入る段階で2850mmを満たすかを再確認する順番になります。
2800mmは身長180cm基準、2850mmは身長190cm基準
2つの閾値は、想定する打ち手の身長が違うだけです。
GOLFZON JAPAN「GOLFZON 設置推奨寸法」(2025)は、打席部分高さの最低2800mmを「身長180cmの人が正確なスイングでドライバーを振った時に当たらないと想定される最低寸法」と説明し、実際には2800〜3200mmの範囲で調整することを推奨しています。
一方、無人ゴルフ営業システム販売施工「シミュレーションゴルフ店舗施工の基本『天高問題』について」(2024)では、施工後2.85m以上を確保できないと機器を販売しないメーカー基準が存在するとされ、その根拠は身長190cmのゴルファーがドライバーを縦に振った際に天井に当たるためと説明されています。
つまり2800mmは「正確なスイングの180cm」、2850mmは「縦振りの190cm」です。客層が法人接待や若年層中心で長身客の来店が見込まれるなら、2800mmぎりぎりの設計はクレームと危険の両面でリスクが残ります。
「天井高3m」は4つの寸法に分解できる
天井高は4層で管理され、契約前に効くのは打席部分高さです。
GOLFZONの資料は、1つの「天井高」ではなく次の4寸法で寸法管理をしています。ここを分けずに「3m必要」とだけ覚えていると、契約後に打席が成立しません。
| 用語 | 何から何までの寸法 | GOLFZON基準の目安(TwovisionNXクッション仕様) |
|---|---|---|
| ブース高さ | スラブ〜天井ボード | 最低3050mm |
| センサー用天井懐 | 天井ボードの上に必要な空間 | 300mm(天井センサー型は必須) |
| 打席部分高さ | 床仕上げ〜天井仕上げ | 最低2800mm(2800〜3200mmで調整) |
| 床上げ | オートティーアップ・床傾斜システム用 | 200mm |
出典:GOLFZON JAPAN「GOLFZON 設置推奨寸法」(Ver.2025.02.06〜)
読者が最終的に気にすべきは3行目の打席部分高さです。1行目のブース高さが3050mmあっても、床上げ200mmと仕上げ厚を引けば打席部分は2800mmを割り込みます。
天井がスケルトンなら「一番低い梁下」がブース高さ
スケルトン天井では、ブース内で最も低い梁下がブース高さになります。
これはGOLFZONの資料に明記されている扱いです。居抜きの在来天井なら天井ボードを外して懐を稼げる余地がありますが、躯体現しの物件では梁下が物理的な上限になります。
募集図面の「天井高3,000mm」は、多くの場合フロアの代表値であって、梁下・ダクト下・スプリンクラー下の実測値ではありません。打席予定位置の真上を実測しない限り、天井高の議論は始まりません。
打席有効高の逆算シート|「梁下3050mm」が2500mmになる引き算
打席有効高は梁下高から天井懐300mm・床上げ200mm・仕上げ厚を引いた残りで、最大550mm目減りします。
計算式は次の1本だけです。
打席有効高 = 梁下実測値 −(天井懐300mm:天井センサー型のみ)−(床上げ180〜200mm:オートティーアップ/床傾斜システム採用時のみ)−(天井仕上げ・クッション厚:実測値、不明なら50mm)
同じ梁下3050mmでも、構成次第で500mmブレる
構成を3通り並べると、同じ物件の可否が反転します。
| 構成 | 引かれる寸法の内訳 | 引き算合計 | 梁下3050mmのときの打席有効高 | 2800mm基準の可否 |
|---|---|---|---|---|
| A 天井センサー型+オートティーアップ | 天井懐300+床上げ200+仕上げ50 | 約550mm | 2500mm | ✕ |
| B 天井センサー型のみ(オートティーなし) | 天井懐300+仕上げ50 | 約350mm | 2700mm | ✕ |
| C 床置きセンサー型+オートティーなし | 仕上げ50 | 約50mm | 3000mm | ○ |
同じ梁下3050mmの物件が、構成Aでは2500mm、構成Cでは3000mmになります。「天井高3mあるから大丈夫」という判断が事故になるのは、この500mmのブレを見ていないからです。
なお床上げの影響は資料によって幅があります。GOLFZONの設置推奨寸法では床上げはTwovisionNX 200mm・Twovision 180mm・GDR/VisionPlus 180mm(オートティーアップ機能なしの場合は床上げ無し)ですが、無人ゴルフ営業システム販売施工(2024)はオートティー導入で床が約25cm上がると記載しています。実務では機種確定後にメーカー図面で確定させてください。
自分の物件で埋める空欄版
内見当日に埋められるよう、空欄の形にしたものが以下です。
| # | 項目 | 記入欄 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ① | 打席予定位置の梁下実測値 | ______ mm | 内見でレーザー計測 |
| ② | 天井懐(天井センサー型は300、それ以外は0) | − ______ mm | GOLFZON(2025) |
| ③ | 床上げ(NX 200/Twovision・GDR 180/オートティーなし0) | − ______ mm | GOLFZON(2025) |
| ④ | 天井仕上げ・クッション厚(実測、不明なら50) | − ______ mm | 現地実測 |
| ⑤ | 打席有効高 = ①−②−③−④ | ______ mm | ― |
| ⑥ | 判定 | 2800mm以上=設置推奨基準/2850mm以上=出荷基準 | GOLFZON(2025)/無人ゴルフ営業システム販売施工(2024) |
⑤が2800mmを割った場合でも即NGではありません。②③は機器構成の選択で0にでき、④は仕上げの変更で薄くできます。動かせないのは①だけです。
ゴルフシミュレーターの必要スペースは何坪?幅・奥行・離隔の実数値
1打席の必要スペースは幅3750〜4500mm×奥行6000〜6020mm、面積では約7〜8坪が目安です。
天井高だけ通っても、幅と奥行と離隔のどれかが欠けると打席は成立しません。GOLFZONの公式寸法を機種別に並べます。
| 項目 | TwovisionNX(クッション仕様) | GDR・VisionPlus(クッション仕様) |
|---|---|---|
| ブース高さ(スラブ〜天井ボード) | 最低3050mm | 最低3030mm |
| センサー用天井懐 | 300mm必須 | 要求の記載なし |
| 打席部分高さ(床仕上げ〜天井仕上げ) | 最低2800mm(2800〜3200mmで調整) | 最低2800mm |
| 床上げ | 200mm | 180mm(オートティーアップなしは床上げ無し) |
| ブース横幅(右打席のみ) | 4120mm | 3750mm |
| ブース横幅(左右打席) | 4500mm | 3800mm |
| ブース奥行(スクリーン裏400mm含む) | 6020mm | 6000mm |
| スクリーン〜打席 | 3000mm程度(連打席は2700mm程度) | 3000mm程度(連打席は2700mm程度) |
| ティー〜壁の安全基準距離 | 2650mm(右打席のみ)/2100mm | 2650mm(右打席のみ)/2100mm |
出典:GOLFZON JAPAN「GOLFZON 設置推奨寸法」(Ver.2025.02.06〜)
シミュレーションゴルフの設置スペースは最低何㎡必要?
1打席あたり約22.5〜27.1㎡、坪換算で約6.8〜8.2坪です。
最小構成のGDR・VisionPlus右打席のみで3750mm×6000mm=22.5㎡(約6.8坪)、左右打席対応のTwovisionNXで4500mm×6020mm=27.09㎡(約8.2坪)という計算になります。
これはブース内寸の話で、受付・待機・トイレ・バックヤードは別途必要です。2打席店なら打席だけで14〜16坪、共用部を含めて20坪台後半からが現実的な物件サイズになります。
2打席以上の連打席はティー間隔3300mmが起点
連打席は横幅の単純な足し算では組めません。
GOLFZONの資料では、連打席の隣接ティー間隔は3300mm以上、横に壁がある場合は2650mmの離隔が必要とされています。スクリーン〜打席は連打席で2700mm程度まで詰める設計が示されています。
スクリーン裏に最低400mmの奥行が要ります。壁ぴったりにスクリーンを張る前提で図面を引くと、後から張り込みができず壁面工法をやり直すことになります。
機種で必要天井高は変わる?天井センサー型と床置き型の違い
必要天井高は機種で変わります。天井センサー型は天井懐300mmが必須で、床置き型には同じ要求がありません。
「天井高は高いほど良い」という説明が上位記事には多いのですが、これは正確ではありません。
天井が高すぎても加工が必要になる機種がある
天井設置型センサーには上限側の規定があります。
TrackMan Help Center「TMiO|Height Dimensions (Mounting Specifications)」(2025)によると、TrackMan iOのマウント高さは打撃面上9’4"〜10′(約2.85〜3.05m)、理想は9’8"(約2.95m)とされ、305cm(10’0")を超える天井ではVESAマウントブラケットで吊り下げて規定高さに合わせる必要があります。
つまり天井高4〜6mの倉庫物件を選んでも、その高さがそのまま有利に働くわけではなく、吊り下げ造作が1工程増えます。高さは「必要量を満たすか」で見る指標であって、多ければ多いほど良い指標ではありません。
ネット仕様はクッション仕様より150mm高い
同じ機種でも、内装仕上げで必要高さが変わります。
GOLFZONの設置推奨寸法がVer.2025.02.06に更新され、天壁クッション仕様と天壁ネット仕様で必要寸法が細分化されました。ネット仕様は壁・天井〜ネットの離隔200mmが必要なため、TwovisionNXではブース高さがクッション仕様3050mm→ネット仕様3200mmと150mm上がります。
| 機種・仕様 | ブース高さ(スラブ〜天井ボード) | 天井懐 | 床上げ |
|---|---|---|---|
| TwovisionNX クッション仕様 | 最低3050mm | 300mm | 200mm |
| TwovisionNX ネット仕様 | 最低3200mm | 300mm | 200mm |
| Twovision クッション仕様 | 最低3030mm | 300mm | 180mm |
| GDR・VisionPlus | 最低3030mm | 記載なし | 180mm(オートティーアップなしは無し) |
出典:GOLFZON JAPAN「GOLFZON 設置推奨寸法」(Ver.2025.02.06〜)
物件を先に決めて機種を後で選ぶのではなく、梁下実測値を先に確定させ、その数字で選べる機種と仕様を絞るのが順番として安全です。仕様変更だけで150mm、構成変更で500mmが動きます。
梁下実測値でどこまでやれる?天井高別・業態の分岐チャート
梁下2700mm未満でも店は作れます。ただし天井センサーとオートティーを捨て、業態をレッスン側へ寄せる判断が要ります。
実在事例に紐づけた意思決定表が以下です。「3m未満=即NG」ではなく、「3m未満なら何を捨てて何を取るか」を決めるための表として使ってください。
| 打席位置の梁下実測値 | そのまま置ける機器構成 | 必要になる工事 | 諦める機能 | 寄せやすい収益モデル |
|---|---|---|---|---|
| 〜2700mm | 標準構成は不可 | 打席上部のはつり、または斜め天井・段差天井で打席上部のみ確保 | 天井センサー/オートティーアップ/床傾斜/フルスイング前提の打ち放題 | アプローチ・ショート特化、パッティング、スイング解析+レッスン、法人福利厚生 |
| 2700〜2900mm | 床置きセンサー型+オートティーなし+薄仕上げ | クラブ通過エリアのみ天井を抜く、天井仕上げの薄型化 | 天井センサー、オートティーアップ(床上げ分) | 会員制レッスン、ゴルフカフェ・バー併設、少打席高単価 |
| 2900〜3100mm | GDR・VisionPlus系(最低3030mm)が射程 | 天井センサーを使うなら懐300mmの確保、スプリンクラー・ダクトの点対応 | 構成次第でオートティーか天井センサーのどちらか | 打ち放題+レッスン併用、無人運営 |
| 3100〜3350mm | Twovision系まで選択肢が広がる | 原則不要。点障害物の回避のみ | 原則なし(ネット仕様は要再計算) | フルスイング主体の打ち放題、ラウンド体験、法人イベント |
| 3350mm以上 | ネット仕様を含め選択自由 | 高すぎる場合は機器の吊り下げ加工。倉庫は空調・防音の追加 | なし | 多打席・大型店、ラウンド体験主体 |
実測事例はH2800〜3895mmに分布している
商用施設でもH2800〜2900mmで成立している例があります。
XswingGOLF「シミュレーションゴルフ打席サンプル集」(2024)に掲載された15事例の設置スペース高さはH2800〜3895mmに分布し、スポーツクラブ・インドアゴルフ・ゴルフカフェ・ゴルフバーといった商用施設でもH2800〜2900mmの事例が複数あります。主な事例は次のとおりです。
- 名古屋市のゴルフカフェ:W3420×D6630×H2800。天井の一番低い梁下H2400をかわすために天井を斜めに造作
- 別のゴルフカフェ:W2975×D5200×H2800。梁下H2400をかわすために天井に変則的な段差をつけて高さを確保
- 愛知県の事業所内:W3800×D5700×H2900。オートティーアップ機を床下H200に設置したため天井高有効寸法H2700と低く、クラブ通過エリアの天井を斜めに造作
- 徳島市のゴルフスタジオ:W2900×D6790×H3250。オートティーアップ機を床下へ設置するために天井高3250mmを確保
梁・ダクトは「面」ではなく「点」として扱う
障害物は避けられれば、フロア全体の天井高は問いません。
上の事例が示すとおり、梁下H2400という数字は打席上部を斜め天井・段差天井でかわせば設置スペースH2800に化けます。打席を斜めに振って壁際のティー位置を回避した例もあります。梁・ダクト・スプリンクラー・照明は「面」の制約ではなく「点」の障害物として扱えるということです。
落とすべきでない物件は「フロア天井高が低い物件」ではなく「打席予定位置の真上に動かせない障害物がある物件」です。前者は造作で解けますが、後者は解けません。
インドアゴルフの開業物件はどう選ぶ?内見30分の実測チェックリスト
物件選びはレーザー距離計1本で決まります。天井高を含む11項目を測れば、契約前に工事と機種変更の要否が判明します。
測る順に11項目
上から順に測れば、途中で不可が出た時点で切り上げられます。
- 打席予定位置の真上の梁下 — 2850mmを下回ると、メーカー出荷基準に触れる可能性があります(無人ゴルフ営業システム販売施工 2024)
- フロア内で一番低い梁下 — スケルトン天井ではここがブース高さの上限です。打席位置をずらして回避できるかを同時に確認します
- スプリンクラーヘッド下端 — 移設は消防設備工事です。貸主指定のB工事扱いになると費用と工期が跳ねます
- 空調ダクト・配管下端 — 打席上部を通るなら、斜め天井・段差天井でかわすか、打席の向きを振ります
- 照明器具下端 — 器具だけなら埋込やライン化で数十mm稼げます。クラブ通過位置にあるなら変更は必須です
- スクリーン設置予定壁の有効幅 — 右打席4120mm/左右打席4500mm(TwovisionNXクッション仕様)を下回るなら、GDR系への機種変更か左右打席の断念が発生します
- スクリーン裏に取れる奥行 — 最低400mm。取れないとスクリーンの張り込みができず、壁面工法の変更になります
- 打席〜スクリーンの奥行 — 6000〜6020mm。不足すると連打席仕様(2700mm程度)への設計変更が必要です
- ティー予定位置から左右壁までの離隔 — 2650mm(右打席のみ)/2100mm。下回ると安全基準距離を満たせません
- 床の既存段差・床上げの有無 — オートティーアップ採用で床が180〜200mm(資料により約25cm)上がり、有効高がさらに減ります
- 天井がスケルトンか在来天井か — 在来なら天井ボードを外して懐を稼げる余地があり、スケルトンなら梁下が物理的な上限です
インドアゴルフの天井高が足りない物件を切る前に確認する3点
不動産会社に聞いても答えが出ない論点は、その場で仲介に投げます。
- 打席上部のみの天井はつり(天井撤去)について、貸主承諾は取れますか。条件を書面で出せますか
- スプリンクラー・ダクトの移設はA工事・B工事・C工事のどれですか。指定業者はいますか
- 原状回復時、はつり部分と造作天井はどこまで戻す必要がありますか
この3問は内装業者でも機器メーカーでも答えられません。貸主にしか回答できない論点を、内見当日に仲介経由で投げることが、契約前の最大の時間短縮になります。
11項目のうち1〜5は天井、6〜9は平面、10〜11は構造の確認です。天井高だけ測って帰ると、幅か奥行で落ちたときに再訪が必要になります。所要は慣れれば30分です。
インドアゴルフのはつり工事の費用は?天井が足りないときの3択
はつり工事の費用に公開された一律相場はありません。金額より先に、貸主承諾・工事区分・原状回復の3条件を確認します。
はつりの費用は、天井の構造(在来天井かデッキプレート現しか)、面積、アスベスト含有の有無、工事区分、夜間作業の要否で大きく変わります。相場を先に知ろうとするより、そもそも実施できる物件かどうかを先に確定させるほうが判断が早く進みます。
天井高が足りないときの3択を比較する
選択肢は工事・造作・物件変更の3つです。
| 選択肢 | 内容 | 効きどころ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ① はつり工事 | 打席頭上だけ天井を撤去して懐を開ける | 在来天井で、上階スラブまでの懐がある物件 | 貸主承諾が前提。原状回復の範囲を契約時に確定させる |
| ② 斜め天井・段差天井の造作 | クラブ通過エリアだけ天井を持ち上げる | 梁下がH2400程度でも成立した事例あり | 意匠と空調吹出口の再設計が同時に必要 |
| ③ 倉庫物件・新築 | 最初から天井高4〜6mを確保する | 高さの制約から完全に解放される | リフォーム費用は通常の1.5倍(無人ゴルフ営業システム販売施工 2024)。空調・防音の負荷も上がる |
一般的な居抜きテナントの天井高は2.7〜2.8mとされており、そのままでは打席部分高さ2800mmに届かないケースが大半です。逆に倉庫物件は4〜6m確保できますが、費用が1.5倍になる点と、③を選んでもTrackMan iOのように吊り下げ加工が必要な機種がある点は前述のとおりです。
天井高に使う予算と機器予算はトレードオフになる
工事で高さを買うか、機器で妥協するかの配分問題です。
店舗デザイン.COM「デザイナーの流儀」によると、シミュレーター機器の費用目安はエントリー機200万〜500万円、ハイエンド600万〜1,500万円、スクリーンは1面30万〜100万円、プロジェクターは1台20万〜50万円とされています。
はつりや天井造作に費やす金額は、ハイエンド機とエントリー機の差額と同じ土俵で比較するべきです。天井高を工事で買った結果、機器をエントリー機に落として計測精度や演出が競合に劣る、という順番の誤りは起こりがちです。
逆算シートの構成C(床置きセンサー型+オートティーなし)なら引き算は約50mmで済みます。工事費をかける前に、構成変更で解けないかを必ず先に検討してください。
天井高は集客と会員継続にどう効く?低天井で成立させる収益設計
インドアは2,541施設まで増え、1施設当たり利用者数は前年度比1.1%減です。天井高の制約は業態設計で吸収します。
供給が増え、1施設あたりの利用者は薄まっている
施設数の増加局面では、低スペック店の淘汰リスクが上がります。
公益社団法人全日本ゴルフ練習場連盟(JGRA)の2025年度全国練習場施設数調査(2026年1月30日現在)では、全国4,800施設(前年比+988)のうちインドアが2,541施設(+1,029)、アウトドアが2,259施設(−41)となり、インドアがアウトドアを上回りました。地域別ではインドアの関東1,322施設(+397)、関西503施設(+234)です。ただしJGRAは2025年度より実態をより正確に把握するため調査方法を変更しており、インドア施設数の前年対比には大きな差異が出ていると注記しています。単純な前年比較はできない点に注意してください。
参考までに、同連盟の2023年10月31日現在の調査(一季出版ゴルフ特信 2024)では全国3,840施設のうちインドア1,518施設、うち関東933施設(61.5%)・東京都596施設(39.3%)と、地域偏在が強く出ていました。
一方、ゴルフ経営研究所(KGR)調査の24年度(2024年4月1日〜2025年3月31日)集計では、全国ゴルフ練習場は2,932施設(前年度比1.6%増)、延べ利用者数9,548万8千人(同0.5%増)に対し、1施設当たり利用者数は3万2,568人で前年度比1.1%減でした(一季出版ゴルフ特信 2026)。需要は増えているが、施設の増加がそれを上回っている構図です。
天井高が取れない物件は「上達実感」側に収益設計を寄せる
フルスイング主体のモデルは、低天井では成立しづらくなります。
打席有効高が2800mmを割る、あるいはぎりぎりという物件でドライバーのフルスイングを主商材にすると、危険性と体験品質の両面で不利になります。この場合、収益の軸を次のいずれかに寄せる判断が要ります。
- レッスン・スクール型:単価を時間あたりで取り、打席稼働率ではなく指導枠で売上を作る
- スイング解析型:飛距離の演出ではなく、動作の可視化と改善提案を商材にする
- アプローチ・ショート特化型:100ヤード以内のスコアメイクに用途を絞り、必要スイング軌道を小さくする
スイング解析については、タブレットで撮影した動画から骨格を検出し、手本のスイングとタイミングを比較して課題箇所を表示するタイプのツールが普及しています。工事を伴わずに導入できるため、天井高の制約がある物件とは相性が良い一方、解析が担うのは課題の可視化までであり、スコアの改善は練習量や体格・可動域などの個人差に左右されます。導入を検討する際は、解析結果が具体的な練習メニューに接続されるか、スタッフが会話の起点として使えるかを確認してください。
天井高は物件の合否判定ではなく、どの業態で戦うかを規定する変数です。梁下2800mm台の好立地をレッスン特化で取るほうが、郊外の高天井で打ち放題を回すより、1施設あたり利用者数が下がる局面では堅い場合があります。
まとめ|内見前に確定させる3つの数字
確定させる数字は、打席予定位置の梁下実測値、引き算後の打席有効高、判定基準2800mm/2850mmの3つです。
次の順で進めれば、契約後の手戻りはほぼ防げます。
- 内見で11項目を実測する(所要30分、レーザー距離計1本)
- 逆算シートに①〜④を入れ、打席有効高⑤を出す
- ⑤を2800mm(設置推奨基準)と2850mm(出荷基準)に照らす
- 割り込む場合は、機器構成の変更→天井造作→はつり→物件変更の順で解決策を検討する
- 並行して、仲介に「はつり可否・工事区分・原状回復範囲」の3問を投げる
測るのはフロアではなく打席の真上、比べるのは募集図面ではなく打席有効高。この2つを守るだけで、天井高が理由の失敗はほぼなくなります。
数字が確定したら、メーカーに現地図面を渡して正式な設置可否判定を取ってください。本稿の寸法は公開資料に基づく目安であり、最終判断は機種確定後のメーカー図面で行います。
よくある質問
インドアゴルフの天井高は2.7mでも開業できますか?
打席有効高2700mmでも営業している事例はありますが、標準構成のフルスイング主体では成立しません。XswingGOLFの打席サンプル集(2024)には、設置スペースH2900・オートティーアップ機を床下H200に設置したことで天井高有効寸法H2700となり、クラブ通過エリアの天井を斜めに造作した愛知県の事例が掲載されています。天井センサーとオートティーを外し、業態をレッスンやショート特化に寄せる前提であれば選択肢に入ります。
シミュレーションゴルフの天井高は高ければ高いほど良いですか?
違います。TrackMan Help Center(2025)によると、TrackMan iOは打撃面上9’4"〜10′(約2.85〜3.05m)にマウントする必要があり、305cmを超える天井ではVESAマウントブラケットで吊り下げて規定高さに合わせます。倉庫物件のような高天井でも加工が発生し、リフォーム費用も通常の1.5倍とされています。必要量を満たしているかで判断してください。
ゴルフシミュレーターの必要スペースは何坪ですか?
1打席あたり約6.8〜8.2坪です。GOLFZONの設置推奨寸法(2025)では、GDR・VisionPlusの右打席のみで3750mm×6000mm(22.5㎡=約6.8坪)、TwovisionNXの左右打席対応で4500mm×6020mm(27.09㎡=約8.2坪)となります。受付・待機・バックヤードは別途必要で、2打席店なら共用部込みで20坪台後半からが現実的です。
内見では天井高をどこで測ればいいですか?
打席予定位置の真上、クラブが通過する2m四方の梁下を測ります。GOLFZONの資料は、天井がスケルトンの場合はブース内で一番低い梁下高さがブース高さになると明記しています。フロアの平均天井高や募集図面の数値は判断材料になりません。スプリンクラー・ダクト・照明の下端も個別に測ってください。
はつり工事をした場合、原状回復はどうなりますか?
契約条件次第で、退去時に天井の復旧を求められる可能性があります。はつりは貸主の承諾が前提であり、費用の相場以前に「実施可否」と「原状回復の範囲」を契約前に書面で確定させる必要があります。スプリンクラーやダクトの移設が貸主指定のB工事扱いになると、費用と工期の両方が想定を超えやすい点にも注意してください。
